オランダのアパート探し、本当に大変です。
日本を出る前に「内覧のアポイントを取るためのメールを不動産業者に送っておいたほうがいいよ」という、オランダ在住のコンサルからのアドバイスもあったのに、こんなに超売り手(貸す側が超有利)市場であることを甘く見ていました。
内覧にこぎつけるまでが大変
もちろん、いくつかのアパートの候補は探しておいて夢だけは膨らませながら、事前に不動産屋に連絡することせずに来てしまいました。結論から先にいうと(我が家のケースでは)、事前のメール連絡はあまり意味がなく、オランダ入国後もメールだけでは内覧のアポどりどころか、入居可能物件にすら行き当たりませんでした。
日本とオランダの違いを先に書いておくと、日本での賃貸物件サイトって、まずSUUMO、アットホーム、ホームズ、CHINTAIの4つくらいですよね。その4大サイトは全国津津浦浦のアパート・マンションが網羅的に、しかもほぼ同じフォーマットで掲載されて、広さや家賃、駅からの距離などでリストの並べ替えができてとても選びやすいです。ただ、同じアパートの1室でも複数の不動産業者が登録してて、写真の綺麗さや、なんとなく評判の良さそうな不動産業者を選んで問い合わせするという難しさはありますが。
ところがオランダの不動産情報サイトって
オランダに来てまずやったことは、たくさんある物件紹介サイトをざーっと見て回り、希望の物件のお問合せフォームからたくさんのメールを送りました(多分30件以上)。それぞれのサイトで掲載されている情報がかなり違い、しかも物件数はかなり少ないです。なので、たくさん送ったメールの返信が(運良く)帰ってきたとしても、そのフォーマットが整っておらず、どの物件に問合せたのかが分かりません。これには難渋しました。もう一度、物件サイトに戻り、どのアパートを問い合わせたのかをメール文面とにらめっこしながら照合しなければなりません。しかも帰ってきた返事は「もうすでに貸し出している」というものばかりです。物件が登録された日付はその1〜2日前のものでもです。
中には「有料登録(€20〜€30程度)すると、多くの物件を紹介しますよ」というところもあり、毎日のようにリストが送られてきますが、なかなか希望に沿ったものには出会えませんでした。自社物件を紹介する不動産屋さんのサイトでも、すでに貸し出し済みの物件ばかり掲載されていて、流通の速さがここでも際立っています。
(もし日本で同じ状況だったら家賃が高騰して、それを支払える人だけが引っ越し可能になるはずですが、そうならないのは家賃に対して何らかの行政の規制があるのかもしれません)
つまり、サイトに掲載しても数日内に入居が決まってしまうので、「すぐにでも見たい」ことを伝え、当日や翌日のアポイントを取ることが肝心です。実際に内覧に行くと、私たちだけでなく、家探しに苦労しているほかの家族も居合わせます。そして不動産業者からは「あなた方がすでに○人目だからすぐに決めてもらわないと入居は難しい」という究極の選択を迫られます。まだほかにも見たい物件はあるし、その場所がベストであるという自信もないのに!
Facebookの物件紹介グループは使える?
オランダ在住日本人YouTuber・RIOさんの動画によると「アパートの貸し手と借り手(個人間)をマッチングさせるFacebookのグループページが有効」という情報もありました。実際に、アパートも見つけることができ、内覧に行きましたが、希望した場所でないこと、アパート自体古すぎて使いにくそうだったことでお断りしました。そこでも「ほかに借りたいという人がすでに見に来たので、今ここで決めて」という選択を迫られました。
ほかにもいくつかFacebook上で希望に叶いそうな物件を見つけましたが、明らかに金額と写真、エリアの相場と合わない物件もいくつかあり、「詐欺」という書き込みもなされています。そこに気づかず、いくつか問い合わせてみましたが、返事のないものや、返事があってもそのオーナーの住所地がスペインだったり、本人のFacebookの登録が2021年だったりで、あからさまに怪しい物件が多数あります。もし慎重に見ていなかったら、アパートが見つけられない焦燥感にかられて、つい騙されていたかもしれません。
ではどうやって見つけた?
我が家の場合、ParariusとFUNDAというサイトが役立ちました。エリアを選択してリスト表示からマップ表示に切り替え、駅近くの物件をマウスオーバーしてポップアップします。すると、ポップアップ画面の中に、扱っている不動産業者の名前が出てきます。そのエリアに複数取扱い物件を抱えている業者ならば、そこに電話するのです。その場合でも、表示された物件はすでに貸し出し済みの場合が多いですが、きちんとした会社なら「まだ掲載していないけど、同じような物件があるわ」と提案をしてくれます。その場合、まだ競争相手が少なく、入居の可能性はかなり高いと言えます。
そして、運命の今日はDelftで見つけた物件の内覧日です。その近所で内覧可能な物件がないか、Parariusの地図上で探していると、数日前に一旦電話して入居可能日が1カ月以上先なので諦めかけていたものがあり、その取扱業者に電話をしました。運良く、先のアポの45分後の内覧に成功しました。
Delftの最初の物件はDelft中央駅から歩いて約5分の一棟貸しで€2000。2階〜3階~屋根裏部屋まである大型のアパートです。床が斜めっていることでかなりの築年数であることがわかリます。ビー玉を置いたら盛大にだぁーっと転がるはずです。 もしかしたら数日で気分が悪くなるかもしれません。同じタイミングで内覧してた大学生グループは「オランダのアパートあるある」と苦笑していました。もしここを借りるとするならば、屋根裏部屋を学生に貸し出して家賃負担を軽減するなど、オーバーした予算の回収法を検討しなきゃいけません。
さて、今回成約しそうな物件は、築100年以上の建物をリノベーションしている真っ最中で、工事はあと1カ月程度かかるものです。最初の問い合わせでそれはわかっていたのですが「念の為」的に内覧に行こうというものでした。約束の時間きっかりに行くと、すでにLさんという担当者が待ち構えており、早速「まだ工事中で、参考にならないかもしれないけど」と案内されました。
そこらじゅうに養生シートが貼られ、足場の組まれた吹き抜けや階段をすり抜けながら、Makitaの電動工具ならんだ工事現場に入っていきました。そこで見せられた一室は、これまで見てきたどのアパートよりも洗練された空気感です(まだ工事中なのに)。天井高は4メートルくらいあり、一部をロフトのように仕切って2層構造にしています。キッチンやシャワー、トイレはもちろん新品で、食洗機までついています。
同じ建物内にもうひとつ見てみたい部屋がありました。そこは建物最上部の屋根裏部屋で、階段で4階部分まで上る必要がありますが、室内に露出した木の梁の重厚感や、窓から見える運河の風景、天窓の明るさなど、ここでしか味わえない特別な雰囲気を兼ね備えていました。デフォルトは、家具なしですが、追加料金で家具付きでレンタル可能であることを聞いて、ここに即決しました。
オランダのアパートの仕上げには大きく3〜4種類あって、「床が貼られていない状態」と「床は貼ってあり、家具さえ持ち込めばいつでも住める」、「でもその場合、洗濯機やは用意してね」、「洗濯機、冷蔵庫、食洗機、オーブンがあり、ベッドやソファ、テーブルが備わるFurnished」など、設備内容にグレードがあります。
もちろん、移住である以上いつでも住み始められるFurnishedが理想ですが、アパート探しが難航してるあいだ、許容範囲を広げる意味で床なしのアパートを見て「床くらい自分で貼れるかもね」とか大口をたたく自分にも気がつきました(いや、やっぱり無理か)。当初のスケジュールよりは入居日が延びましたが、逆に考えれば準備する時間に余裕ができたことで、買い揃えるものも余裕を持って選べます。この屋根裏部屋に合うオランダらしいデザインセンスのものを集めようと思います。
とにかく心は決まってホッとしています。まだ契約はこれからなので気を抜くことはできませんが…。
おまけ
賃貸住宅の契約には大抵、過去3カ月分の財務状況を証明する書類を求められ、中には「趣味」や「あなたのユニークさ」を求めるところもあって困惑します。最初の内覧で担当者に、現在ビザの申請中であることや、入国したばかりなのでオランダでの過去3カ月分の財務諸表は出せないこと、オランダの会計事務所に(前年度日本での)決算書翻訳を用意してもらっていることなどを伝えることが大切だと思いました。今回はダメ押しで「家賃は6カ月分を前払いする用意がある」ことも伝えました。
日本人がオランダをイメージするとき、築100年以上のレンガ建て、窓には白い縁取りがあって、身長の2倍くらいある重い木戸、目の前は運河…など、ハウステンボスのような街並みをイメージしがちです。もちろんそんな風景もたくさんありますが、多くの住宅は四角張って無個性で、背景に風車はなく、路上駐車の車のあちこちは凹んでいます。自転車が異常に多い事以外、ほかのヨーロッパの都市と風景はあまり変わりません。ここに至るまで、そんな街並みのアパートばかり目にしていたので、なんとなく心の奥底で「せっかくオランダに住もうというのに、このアパートかあ」というため息が澱んでいたのも事実です。それくらい、アパート探しに焦っていました。
でも、今回見つけた物件は、築100年以上の行政施設をリノベーションした、内装は最新の設備の屋根裏部屋。眼の前は運河で、大学生ら若者が多く住む、雑多な商店がならぶ繁華街です。ベネチアと裏原宿を足して2で割ったような(意味わかりませんね)感じです。ともあれあと数日で契約までこぎ着けると思います。応援してくれた皆さん、あともう少し念を送ってください(笑)。
更に追記
実は明日以降もアパート内覧のアポイント4件分が取れています。ロッテルダムの繁華街に近く、住みやすそうな場所で家具付き(Furnished)の物件も含まれており、もしさっき決めた場所がだめだった場合の保険として取っておきたい物件です。
念の為、先ほどの不動産屋さんに「ほかの物件のアポも取れてるけど、そっちは見なくても大丈夫かな?」って尋ねたら即刻メールの返信で「たぶんオーナーのOKが取れるから、ほかの物件は見ないでもいいと思うよ」という返事。この担当者さん、信用できそうです。
ちなみにその不動産屋さん、Googleの評価でも4.8と高得点でした。世界はGoogleの手のひらで転がされている。今日はいい日だ。